小物・ガジェット紹介

ここ数年、ネットでの研修会や勉強家、研究会などが大いに増えたのですが、それはこの時代を生きる専門家にとっては必然的なことだろうと思います。当然中にはこうした変化を歓迎できない方もいらっしゃると思いますが、私はもともと作業にパソコンやICTを用いることに関心はあったため、比較的早くにこの変化になじんだ方だと思います。

だからどうしたという話なのですが、いくつか便利な小物やガジェットを使用してきましたので、最近よく使っているものを共有したいと思います。

1.撮影機材

撮影といっても動画を撮ることだけではなく、zoomを使用するなど、オンラインでの映像送信も含めて考えています。

私はたいていの場合外付けのカメラを使用しているのですが、一時期スマホを外付けカメラにして簡易化する方法も考えたりしていました(これについては以前に書きました→こちら)。けれども、今はミラーレス一眼を使用する形に落ち着いています。理由は、スマホが軽量で簡易であるとしてもスマホを固定するために三脚などが必要になること、アプリを使用した接続が不安定なところがあること、などでした。

蛇足ですが、MacとiPhoneでは今後、純正の仕様でこの連携がスムーズになるようです。

私は今のところ、オンラインの研修会をして空中プレゼンテーションをする時にも、ちょっとしたミーティングをする時にも、三脚にミラーレス一眼を載せていて、今後またスマホ使用に戻るかは不明です。

1) クイックリリースシステム

さて、その三脚を使用する際のことですが、三脚にカメラを載せるためには、カメラ側にプレートと呼ばれる平たい板を付け、三脚側のクイックシューと呼ばれる受け皿に乗せ、固定する必要があります(参考:リンク)。以前は三脚メーカーによってこの規格が異なっていたため、複数のメーカーを使用する際には、プレートを付けて、クイックシューに固定し、使い終わったらクイックシューから外して、プレートを外し、別のプレートを付けて、以下同文、ということを行っていました。

そこに、アルカスイスという三脚メーカーが、自分たちの規格の互換製品を作ることを許容しました。そのために、アルカスイス互換であればどのメーカーの三脚にも使えるという状況が生まれてきています(厳密に言えばアルカスイス規格というものがあるわけではないため、メーカーによって互換性に問題が生じたりしています。これについては後述します)。

とても便利な状況なのですが、1つ不便なこともありました。それは、アルカスイス互換製品は受け皿としてクイックシューではなく、クイックシュークランプを使っているということです。何が違うかというと、クイックシューはプレートをはめ込むとカチッと自動で閉まる、もしくはレバーでさっと挟み込めましたが、アルカスイス互換のクランプはプレートを載せた後、ネジをくるくる回してこれを挟むようになっていることです。あまりクイックではないのですね。

メーカー問わず使えるため便利である反面、クランプであるためにクイックではないのです。

そこで主に中国系の企業から従来のクイックシューのような製品が出てきました。レバーでさっと挟み込めるものです。ただこれは、レバーの締めつけの強度などに問題があって、経年劣化が心配されています。そこに登場したのが今日紹介するUlanziのF38クイックシューシステムです。この製品は何がすごいかというと、プレートをクイックシューにスライドしておくとカチッと自動でロックがかかり、クイックシューのボタンを押しながらスライドさせるとプレートが外れるところです。これまでのクイックシューに比べると圧倒的に着脱時間が減りました(もちろんクランプの比ではありません)。

百聞は一見に如かずでこちらをご覧いただければ(どうでも良いことですが、ずいぶんクラシカルなレンズをつけていますね)。

ただし、注意事項も1つあります。それはアルカスイス互換を謳いながら、実際には多くの他の互換製品との互換がないことです。互換製品と互換性がないってもう言語として崩壊していますよね。募っているけど募集はしていない、みたいな。これが正式な規格がないという問題につながっているところです。

どういうことかというと、F38のクイックシューの厚みが他の互換製品よりもわずかに薄いために、他のメーカーのプレートが入らないのです。目で見て分からないほどの違いなのですが、いくつかのプレートを試しても使用できませんでした。そのため、プレートはUlanziのF38のものを使用しなければなりません。逆に、このプレートは、他のメーカーのクイックシューやクランプにははまります。ただ、その時もプレートがわずかに薄くできているため、クイックシュー(とクランプ)にはめた時に隙間ができます。隙間ができるということは、三脚に載せた時の安定性に問題があるということです。オンライン研修などで使用する時は難しいセッティングはないため問題はないと思いますが、ややこしいセッティングをする時は信頼性に問題が出てくるかもしれません。

基本的に、F38システムで使用するのが良いのだと思います。その後、四角いプレートのうち上下(もしくは左右)がF38規格、左右(もしくは上下)がアルカスイス互換というハイブリッド使用のプレートも出たのですが、今度はクイックシューに差し込む向きが固定されるため、使い勝手が落ちます。F38を他のアルカスイス互換製品と互換性のある形で作り直してくれると一番良いのですが、そうはならないようです。

それでも、三脚への着脱が多い方、あるいはそれが億劫でカメラが使えていない方にはお薦めしたい小物になります。便利です。これがあるために、私の撮影のセッティングはちょっと複雑なセッティングをしているにも関わらず全部で5分くらいで準備ができるようになりました(機会があればこれもご紹介したいと思っているのですが、誰の役に立つのだろうと思って、まあいいかと放置しています)。

普段こちらではeコマースサイトへのリンクは貼らないのですが、探しにくいと思いますのでヨドバシ.comのリンクを貼っておきます。Amazonや楽天などにもあると思います。

2) モバイルディスプレイ

ちょっとしたミーティングの際にはわざわざ外付けのモニタは必要ありませんが、空中プレゼンテーションをしようと思うと、カメラから距離を開けて自分の横に大きな空間を撮る必要があります。スライドの操作は後述するリモコンのようなもので行うのですが、それでもzoomなどのビデオ会議システムの操作やプレゼンテーションソフトの操作が必要な場面はあるため、パソコンは手元においています。

そうすると、スライドの確認は手元のパソコンで行い、カメラは前方の顔よりも高い位置にあります(自分を画面の半分以下に置くためです)。何が問題になるかというと、パソコンの画面でスライドを確認しながら話していると、ずっと下を向いて喋っている形になるということです。スライドの順番も全部覚えていればそうはなりませんが、そこまでの労力は払えません(予断ですが、上記のAppleのプレゼンテーションはどれだけ準備をしたのだろうと思います)。下を向いて話していても、それはそれで個人的には嫌いではないのですが、研修という設定を考えるとあまり良いものには思えません。

そのため、今はカメラの前に大きめのモバイルディスプレイを置いて、そこにスライドの内容を表示するようにしています。そうすると顔はおおよそカメラを向き、視線はいくらかレンズからはずれているものの、下を向きっぱなしということにはなりません。

ちょうどよいところにテーブルや代があって、そこのカメラと小さい三脚とディスプレイを置ければ良いのですが、そのようなものはないため、ディスプレイを何かの形で保持することになります。またこれをずっと出しっぱなしにしているわけでもないため、モバイルディスプレイを使用することにしました。画質にそこまでの精度は必要ないし、さっと取り出して、さっとセッティングできるからです。

使っているのは、こちらのものです。

何が良いかというと、USB-C1本で接続ができて、電源の供給もできること、画面が大きいこと、IPSパネルで視野角が大きいこと(画面に正対しなくとも色の変化が少ない)、必要な時は背面の足を引き出して自立させられること、何より背面に三脚用のネジ穴があること、です。これによって、設置の自由度が増します。おそらくこのような三脚のネジ穴のある製品は、ASUS(エイスースと呼びますが、個人的にはエーサスと呼びたくなります)のこの製品MB16ACVともう1つMB16AH-Jくらいだと思います。

MB16AH-Jの方が軽く、そのかわりに自立する足がなく、けれどもミニHDMI端子もついているため、そちらでも良かったかなと思いましたが、ミニHDMI端子では電源供給ができないため、一長一短だと思っています。

実はこれにも先ほどのF38のプレートを付けて、短時間で着脱できるようにしています。

3) リモコンのようなもの

プレゼンテーションの際に、ワイヤレスのリモコンを使用するのですが、対面で行う際にはリモコン機能とレーザーポインターの機能がついた製品を使用していました。スティック型のものが主流ですが、私は何となく滑って落ちそうで、もう少し膨らみのあるものを使ったりしていました。

オンラインの研修になっても同じものを使用していたのですが、だんだんと問題を感じるようになって、それはスライド送りのスイッチがカチカチなることです。研修中もなっていますし、録画をして見返した時もカチカチ音がしています。たいしたことではないのですが、マイクが胸元にあって、その音を拾ってしまうため、もっと柔らかいスイッチのものはないかといくつか別の製品を使用してみましたが、そのあたりはあまり意識されていないのかどれもカチカチ音がする点では変わりませんでした。

結局手元にワイヤレスのキーボードを置いて操作をすると、それほどカチカチ言わないし、ビデオ会議システムでミュートをしたり、チャットを見たり、またプレゼンソフトに戻ったり、ということもできるし、一番便利なのではないかと思いました。

と思っていたのですが、この場合ひざの上にキーボードを載せている状態です。落とさないように水平を保っておくのはちょっと窮屈です。手の持てるもので何かないか、と探していたのですが、プログラマブルキーボードが良いかなと思ってきました。

キーボードとついていますが、多くの製品は複数のボタンがあって、そこに任意のキーやショートカットを割り当てることができるというものです。たとえば、このボタンはコピー、このボタンはペースト、このボタンは保存、このボタンはメールアプリを起動させる(起動していればそちらを前に出す)、などです。左手デバイス、という方が汎用性のある名前かもしれません。私が使っているものは、Xencelabs クイッキーズリモートというものです。

もともとペンタブレットと一緒に使うことが想定された装置で、机の上において使います。そのために、かなり大きいです。邪魔じゃないといえば嘘になります。

けれども、最初の目的通り、ボタンの押し下げでほとんど音がしません。パンタグラフ式のキーボード程度の音で、ほとんど気になりません。それからボタンが8つあり、任意のキーまたはショートカット、またはアプリケーションを割り当てられます。なおかつ、それをアプリケーションごとに登録し、切り替えて使うことができます。たとえば、Keynoteを使っている時、左上はスライドを戻す、右上はスライドを進めるにしています。zoomの時は左上にミュート、その下にカメラオフなどを割り当てています。チャットや参加者もボタンに登録して表示させられます。また、アプリケーションの登録もできるので、Keynoteを使っている時は右下のボタンにzoomを登録しています。その上はOBS studioです。zoomを使っている時は、右下にKeynote、その上はOBS studioです。OBS studioの時は、右下にKeynote、その上にzoomです。これによってKeynoteを使いながら、プレゼンテーション用のリモコンとして使いつつ、左手デバイス(実際は右手に持っているのですが)としてアプリケーションのあいだを行き来できます。

ボタンにキーなどを割り当てられ、アプリケーションごとに切り替えができるとなると、これらの割り当てを忘れてしまう、ということもあるかもしれません。でも、液晶ディスプレイに各ボタンの名前を表示させることができます。「進む」「戻る」「zoom」「OBS」とかですね。そのため忘れても問題になりません。設定はパソコンで行います。

便利です。

上の丸いダイアルにも割り当てられるものはあるのですが、形状から分かるように、連続的に変化するものの処理が得意です(ペンタブレットと一緒に使う時は、ペン先の太さのコントロールや拡大縮小率のコントロールなど)。

もっと上手な使い方もできるかもしれませんし、これの4分の1くらいの大きさのものがあれば一番良いのですが、今はしばらくこれをリモコン代わりに使用しています。

4) レンズフィルター

そういえば、カメラのレンズにはレンズフィルターをつけていました。フィルターには色々な種類がありますが、デュートと呼ばれるちょっと変わったフィルターをつけています。同様のフィルターにブラックミストNo. 5というものがありますが、それと同じような効果を持っています。明るい部分がにじみ、コントラスト(明暗の差)が小さくなり、全体に映画のような雰囲気になります。

フィルター表面に同心円上に溝が掘られていて、ここで光がにじむようです。ブラックミストに比べると安価で、角度によってはこの溝が縞状に見えてしまうこともあります。

後処理でコントラストを下げたり、ハイライトのにじみを付けたり、リアルタイムにそうした効果を演算したりもできるのですが、パソコンのエネルギーを使うため、物理的に実装できた方が良いのかなと思っています。

NDフィルターは使っていません。

一般的に動画はシャッタースピードを1/50秒(50Hz地域)または1/60秒(60Hz地域)で撮ります。最近のカメラの動画のフレームレートは30fps、1秒間に30コマの撮影が標準で、中には60fpsとか120fpsとかもありますが、通常の使用ではあまり意味がないと思います。シャッタースピードはこの秒間30コマを中心にその倍の60コマ=シャッタースピード1/60秒で撮ると良いといわれています。ただ、蛍光灯のフリッカー対策として、電気の周波数に合わせて1/50秒、1/60秒が選ばれるようです。しかし、このシャッタースピードは写真として考えるとけっこうゆっくりです。ゆっくりであるということは光を取り込んでいる時間が長いということです。光を取り込んでいる時間が長いということは、光をたくさん取りこめるということです。光をたくさん取りこめるということは映像が明るくなりすぎるということです。そのため、レンズにNDフィルターと呼ばれる、光を遮って暗くするフィルターをつけることがあります。特に屋外で撮影をする時には必須といっても良いかもしれません(最近はシャッタースピードを上げて撮影する人もいますし、私も外で動画を撮る時は面倒なので1/2000秒とかにしてしまいます)。屋内では必要ないこともありますし、私はむしろ照明の量を調整してNDフィルターなしで使っています。

2.ガジェット

「ガジェット」って何でしょうね。調べてみたら気の利いた小物っていう意味らしいですけど、よく知らないで使っている言葉の1つでした。

前から論文などを読む際に、PDFビューアーとして電子ペーパーが欲しいと思っていました。だいぶ前からいくつかの製品が出ているのは知っていて、購入を検討したこともありましたが今一つ気が乗らず購入にいたりませんでした。気が乗らない理由の1つは速度の問題で、電子ペーパーはその特性上どうしても動作が緩慢です。iPadに慣れた後ではただ本を読むだけのKindleでも動作が遅く感じます。読書とはいえ前後にぺらぺら移動したいことは多々あるのですね。電子ペーパーも同様でした。

かといってiPadで読むことは目に入る光が苦痛で長続きせず、しばらく紙に印刷して、読みながら線を引き、読み終わるとファイルにしまうということを繰り返してきました。悪くはないのですが紙がもったいないなという気持ちにもなっていました。

最近になってBOOXという電子ペーパーがあることを知って、iPadには全く追いついていないものの、ある程度速度が速いこと、OSとしてAndroidが採用されているため既存のアプリが動くこと、特に使いたいものもなかったのですがKindleは読めること、などがあって、最近これを使っています。ボリュームゾーンは10インチか7インチ前後のサイズなのだと思いますが、目的は論文のPDFを読むことであったため、13インチのBOOX Max Lumi2を使用しています。これだと論文をほぼ原寸サイズで読むことができます。

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ペンがついてきます。ペンの書き心地なのか、本体の表面処理なのか、程よい引っ掛かりがあってiPadのようにつるつるしたガラスにペンが滑るという感覚がありません。画面表示も白色度の低いコピー用紙にインクで印字されているように思えます。もちろんペン先と実際の線のあいだには技かな誤差があるため、全く紙に書いているという感覚まではありませんが、紙を消費しないこと、目が痛くないこと、論文を読んで線を引き、メモを取る程度には十分な速度で動くこと、でかなり快適に使えています。もちろん、PDFをたくさんため込んでおくことで、たくさんの紙を持ち歩く必要がなくなります。

ちなみに、線の色は選択できます(私は赤を使っています)。本体の画面はモノクロであるため、赤といってもたんなる黒っぽい線なのですが、線を引いたPDFファイルをパソコンに持っていって開くと、ちゃんと赤い線で記入されています。

最近は論文の校正などがPDFファイルで送られてきたりしますが、これもBOOXに読み込ませて書き込みをすることができるし、それを再度パソコンに落として出版社に送り返すことができます。その時に気付いたのですが、拡大表示をさせると一部分(たしか左上を基準にして拡大表示できる範囲)だけしか表示できず、上下左右にスライドさせて別の部分を表示させるということができませんでした。原稿の校正をしている時に気付いたため、ゆっくり検証する時間がなかったのですが、気付いたことがあれば追記したいと思います。

正規代理店であるSKTではこれに保護ケースがついてきますが、私は重くなるのが嫌で使っていません。

決して安い製品ではないため、誰にでもお勧めできるものではありませんが、1つ1つの論文を味わうというよりも、ある程度の知識を得るために論文を消費していくような読み方をする人には役に立つガジェットではないかと思います(小物というほど小さくもないし、安くもないのですが)。

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